河瀬直美監督
河瀬直美監督

Naomi Kawase
Film director

河瀨直美監督
ユニフォームを語る

バスケットボールに熱中する中学生でした。思春期のモヤモヤがコートの上では発散されてゆく様でした。
中学3年生の時、バスケットボール部のコーチに、奈良市立一条高校への進学を強く勧められました。
バスケットボ-ルの強豪校です。受験に向け猛勉強が始まりました。

迎えた合格発表の日。コーチと2人で受験番号を見つけた瞬間、それまでとは違う新しい生活がスタートしました。
いきなり体育館に連れて行かれ、すぐに練習が始まりました。
入学式の1カ月以上前でした。
高校の制服にも憧れがありましたが、何よりバスケットボール部のユニフォームには強い思いがあります。
キャプテンになって、監督からユニフォームを手渡された瞬間、手のひらに感じた責任感に似た重みと、励ましと期待感が伝わるような感覚が今も鮮明に残っています。
そのユニフォームに恥じない様にとプレーをし続け国体にも出場しました。
強化選手に選ばれたのです。

ユニフォームを着てプレーをする事は、誇りです。
そして皆で何かを表現できる、何かを生み出せる、そんな気がします。

なら国際映画祭2018
なら国際映画祭
Nara International
Film Festival
2018年9月、第5回なら国際映画祭は、古都奈良の街そのものを会場に5日間開催しました。
300人を超えるスタッフの皆さんが、場内での案内・通訳・イベントの進行など、多くのサービスを提供します。
実は全員がボランティアで参加してくださった方々。
「皆さんが着るユニフォーム、今年は生地もデザインもオリジナルでかっこいいポロシャツです」と、前宣伝をしておきました。
スタッフ全員が揃った決起会は、初顔合わせの場です。一枚一枚白いユニフォームを手渡しました。
手渡す瞬間、一人ひとりの目が輝き、嬉しい気持ちがひしひしと伝わりました。
全員にユニフォームが行き渡ったとき、会場一杯に使命感に似た大きな一体感が広がりました。
思いがひとつになった瞬間です。

数十年前、バスケットボール部の監督からユニフォームを手渡され、何かを託されたあの時が蘇ります。


河瀬直美監督

映画監督:河瀨直美
Naomi Kawase

  • Profile:生まれ育った奈良を拠点に映画を創り続ける。
  • 一貫した「リアリティ」の追求はドキュメンタリーフィクションの域を越えて世界各国の映画祭での受賞多数。故郷奈良にて「なら国際映画祭」を立ち上げ後進の育成に力を入れる。
  • 11月23日よりパリ・ポンピドゥセンターにて、大々的な河瀨直美展が開催。
  • 2020年東京オリンピック公式映画監督に就任。

河瀬直美監督がディレクターを務める 古都・奈良の「なら国際映画祭2018」